ビューティー&ヘルスケア特集 Vol.29最新!花粉症対策〜免疫治療が始まっています〜ビューティー&ヘルスケア特集 Vol.29最新!花粉症対策〜免疫治療が始まっています〜

日本人の4人に1人が花粉症に悩まされています

皆さんは花粉症に悩まされてはいませんか?日本人の約4人に1人が発症している今、花粉症は国民病ともいわれています。
花粉症とはアレルギー疾患のひとつで、植物の花粉が原因で起こる季節性アレルギー性鼻炎のことです。ちなみに、ハウスダストやカビ、動物などで起こるものは通年性アレルギー性鼻炎と呼ばれます。

花粉症にはこれまで、内服薬、点鼻薬や点眼薬などによる対策のほか、漢方、ヨーグルトなどの食べ物による予防が一般的でしたが、近年新たに「舌下(ぜっか)免疫療法」という治療法が加わり注目を集めています。そんな最前線の花粉症治療法から日々できるセルフケアまで、花粉症の基礎知識とともにご紹介します。

スギ花粉は2050年までは減らない…

花粉症は世界中にあり、ヨーロッパではイネ科、アメリカではブタクサが主原因です。日本では花粉症の原因として50種類以上の花粉が報告されていて、大きく2つに分けられます。春先に飛ぶスギやヒノキなどの「木の花粉」と、夏から秋にかけて飛ぶキク科のブタクサや初春から秋の終わりまで飛ぶイネ科のカモガヤなどの「草の花粉」です。このうちスギとヒノキが原因の患者が圧倒的に多く、花粉症患者の70〜80%を占めています。

日本でなぜスギやヒノキの花粉が原因の患者が多いかというと、昭和20〜40年代にこれらの植林が全国規模で行われたためです。植えられた木々の多くが花粉を大量に産出する樹齢30年以上に成長したことにより、花粉の飛散量が増えているのです。木の一生を考えると2050年頃までは花粉の飛散量は減らないと考えられています。

「北海道や沖縄には花粉症がない」と聞いたことはありませんか?花粉症の地域差は、気候や風土によって植物の分布や活動に差があることに由来します。
熱帯の沖縄にはスギやヒノキがほとんどないため花粉症は稀です。北海道ではスギやヒノキは極めて少ないですが、シラカバやイネ科、ヨモギがあるため花粉症は起こります。

まずはセルフケアで花粉症を和らげましょう

近年は花粉症の低年齢化と高齢化が進んでいます。自分だけでなく家族のためにも役立つ花粉症のセルフケアを知っておきましょう。

マスクとメガネで花粉を防ぐ

花粉を浴びないよう外出時にはマスクとメガネを着用しましょう。花粉用マスクをきちんと着用すれば、取り込む花粉量を6分の1に減らすことができます。

洋服選びで花粉をつきにくくする

着用する洋服の生地によって花粉の付着率が変わります。羊毛などの毛織物は綿に比べて約10倍もの花粉がついてしまいます。凹凸の少ない生地を選びましょう。また、髪の毛に花粉がつかないよう帽子をかぶることもおすすめです。

花粉を家に持ち込まない

玄関の外で服についた花粉を払い落としてから家に入りましょう。花粉の飛散シーズンは洗濯物を外に干さないことも花粉症対策のひとつです。一度家に持ち込まれた花粉は1年間そのまま存在するともいわれます。掃除の際は、掃除機に加え、ぬれ雑巾やモップがけをすると効果的です。

規則正しい生活を

バランスのいい食生活を心がけ、寝不足、過労、ストレスを避けましょう。腸内環境を整えること、風邪を引かないことなど基本的な体調管理も大切です。

最新の花粉症治療「舌下免疫療法」とは?

多くの人を悩ませるスギ花粉症の新しい治療法として「舌下(ぜっか)免疫療法」が注目されています。2014年に保険適用となり、2018年からは子供も使用可能となりました。

「免疫療法」とは、アレルギーの原因物質をある程度、長期間、持続的に服用することでカラダに慣れさせ、アレルギー反応を起こさせないようにする治療方法です。
これまでも「皮下(ひか)免疫療法」という方法がありましたが、毎回通院して注射しなければなりませんでした。一方「舌下免疫療法」は1日1錠、味も匂いもない錠剤を舌の下で溶かすだけという、とても簡単な治療法です。

「舌下免疫療法」はスギ花粉の症状が出ていない時期から始めるもので、ベストタイミングは5月下旬頃からです。服用を続けると次のシーズンには約90%の人が花粉症の症状が軽くなることがわかっています。個人差はありますが、3〜5年を目安に服用を続けることで花粉症を根本的に治すことも可能です。

治療を始める際はアレルギー検査や服用指導を受ける必要があるため、舌下免疫療法を行なっている耳鼻咽喉科に相談してください。

毎年花粉症に悩まされている人も、新しい舌下免疫療法で晴れやかな春を迎えられるようになるかもしれません。

永倉和仁 医師

永倉和仁 医師

ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック院長。アレルギー専門医NPO花粉情報協会理事。国立生育医療センター免疫アレルギー研究部、環境庁国立環境研究員などを経て、文科省委託「スギ花粉症克服に向けた総合的研究」調査にも参加。臨床と研究、療法でアレルギー治療を行う。

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