ヘルスケアNEWS

ノロウイルスにかかっても、「下痢止め」など薬の服用はNG!
キッチンやトイレを「清潔」にしておくことも効果的な予防に

ノロウイルスはインフルエンザと並び、冬に大流行するウイルス性の感染症です。
「食中毒」の一種であることから、軽く考える方も多いようですが、シニアの方や幼児、赤ちゃんなどは脱水症状になったり、おう吐した物を詰まらせることで死に至るケースもあるので、単なる「食中毒」と甘く見てはNG!

また、インフルエンザには予防接種というある程度、有効とされる「予防法」があります。万が一かかった場合でも、インフルエンザは適切な時期に病院へ行き、抗インフルエンザ薬を処方してもらえばあまり重篤になることはありませんが、ノロウイルスには現在のところ「有効な薬がない」ため、発症するとかなりツライ思いをすることに…。
さらにはおう吐物の処理など、感染者以外の負担も大きく、間違った処理で感染者を 増やすことがあるので、ノロウイルスに「感染しない・させない」ためにも正しい知識を知っておくことが大切です。

そもそもノロウイルスとはウイルスが原因で起こる感染性胃腸炎のこと。
食中毒には細菌性のものなど色々ありますが、厚生労働省のデータによると年間の患者数はノロウイルスがトップで63%!11月~2月に大流行するため、冬のイメージが強いですが、他の季節でも発症例があり、年間を通して注意しなければならない食中毒ということになります。

主な症状は腹痛や下痢、吐き気やおう吐など。発熱することもありますが、37~38度程度と比較的軽度でおさまります。また筋肉痛や頭痛が起こることもありますが、これらの症状は1日、2日で改善する傾向があり、後遺症などが残ることもありません。
これだけ見ると、さほど深刻な印象を持たないかもしれませんが、ノロウイルスは下痢やおう吐などが「急激かつ強烈、さらに何度も起きる」傾向があり、たとえ1日、2日であっても苦しい思いをするという方が多いようです。
また、乾燥や熱にも強いのが特長。ウイルスによっては人間や動物の体内から出ると死滅するものもありますが、ノロウイルスは自然環境の元でも長期間生存することができます。 感染力が非常に強く、10個程度のウイルスであっても感染することがあるので要注意です。

そんなノロウイルスですが、冒頭でもご説明したようにこのウイルスに効果のある抗ウイルス剤は現在のところありません。さらに、人には免疫力というものがあり、一度その病気にかかると「抗体」のようなものができ、同じ病気にかかりにくくなるという傾向がありますが、ノロウイルスの場合「長期的な免疫」というのができにくいので、1度かかれば大丈夫!という考えは危険です。

もし発症してしまった場合は、有効な薬などがないので、症状がおさまるまで待つしかないのですが、繰り返しくるおう吐や下痢で「脱水症状」になることが多いので、市販されている経口保水液などを摂るようにしましょう。
ただ、おう吐などが頻繁にある時に補給をするのはNG!水分を摂取することで余計におう吐や下痢がひどくなってしまうことがあるので、少し症状が落ち着いてからちょっとずつ、無理のない範囲で水分を補給していきましょう。

また、下痢やおう吐の症状がツライと「下痢止め」などの薬を使いたくなりますが、これは絶対にダメ!下痢止めを使うと、かえってノロウイルスが腸管の中に溜まってしまい病気の回復を遅らせることがあるので、早期改善のためには自己の判断で薬を服用するのは控えた方が良いでしょう。

ノロウイルスに「感染しない・させない」具体的な予防&対策法とは?!

そこで、何とかノロウイルスに「かからない」ために「予防」をする必要がありますが、厚生労働省が出しているノロウイルスに関する情報によると

・加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱する
・食品取扱者や調理器具などからの二次感染を防止する
・手洗い、うがいを徹底する

ことが大切と言われています。

ノロウイルスの感染経路についてはほとんどが「経口感染」と考えられています。
その原因の一つとしてノロウイルスに汚染された二枚貝などを摂取することで感染すると言われているため、これらの食品を食べる際には十分に加熱処理をすることが大切です

では具体的にどの程度、加熱すればよいのか?ノロウイルスは熱に強く、かつ、現時点でノロウイルスがどのくらいで活性しなくなるか?といった実験ができていないので正確な数値はわかっていませんが、厚生労働省は「二枚貝などの食品の場合は、中心部が85度~90度で90秒以上の加熱が望ましい」と言っています。

今の時期からは、旬を迎える二枚貝を食べる機会も多くなると思いますが、加熱が十分でないとノロウイルスに感染するリスクが高まるので、自宅ではしっかりと調理をし、外食の際は生食を控え、少しでも加熱が足りないな?と思うものは食べないなど、配慮をするとGOOD。「食品取扱者や調理器具などからの二次感染を予防する」ことは難しいように思えますが、少しでもおかしいな…と思うものは口に入れないなど、注意をするだけでも予防にはなります。

そして「手洗いやうがい」「マスクの着用」は食中毒予防にも効果がある対策ですが、とくに「手洗い」について、厚生労働省は「手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法」と言っています。

手洗いをするタイミングについては
・調理を行う前
・食事の前
・トイレに行った後
・下痢などの患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後(手袋をして直接触れないようにしていた場合も含む)
に必ず行ってください。

洗い方ですが、

①指輪や腕時計などをはずす。
②石けんを十分に泡立て、ブラシなどを使用して手指を洗浄する。親指、指の間、爪の間、親指の周り、手首、手の甲は汚れが残りやすいため、念入りに重点的に石けんでゴシゴシと洗う。
③すすぎは温水による流水で十分に行い、清潔なタオル又はペーパータオルで拭く。

これを是非覚えておきましょう!

石けん自体にはノロウイルスの活性を失わせる直接的な効果はありませんが、手の脂肪などの汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくしてくれる効果があると言われています。よく飲食店などで手指を消毒するエタノールやアルコールなどの消毒液がありますが、これをやっておけば手洗いは不要!という考えは×!!
石けんと流水を用いた手洗いに比べると有効とは言い難いため、あくまでも手洗いができない時の代用…くらいに思っておくと良いです。また爪はウイルスなどがとくに付着しやすいので、できれば短くしておく方が予防にはなります。

そしてキッチンやトイレなど、住環境を清潔にしておくと◎。
この2箇所は二枚貝を調理したり、おう吐や下痢などでウイルスが付着しやすい場所にもなるので、ノロウイルスに「感染しない・させない」ためにもいつも以上に洗浄を心がけましょう。キッチンについては主にシンクの周りやよく開け閉めする冷蔵庫の扉などに注意!トイレは便座、便座のフタ、トイレットペーパーのホルダー、洗浄レバーや便座横のスイッチ類、ドアノブなどウイルスが付着しやすい6箇所を除菌などができるウェットティッシュや消毒液などで常に清潔にしておきましょう。
またウイルスの飛沫を防ぐため、トイレを流す際は必ず便座のフタをしめること!さらに、和式の場合は床にウイルスが飛び散ることが多いので、床も小まめに洗浄すると良いです。

「感染を広げない」ために知っておきたい「おう吐物の処理方法」

そしてノロウイルス対策で重要なのが、「おう吐物などの処理」。
ノロウイルスは非常に感染力が強く、12日以上前にノロウイルスに汚染されたカーペットが感染源になった事例もあるので、とにかく放っておかず、「迅速」、かつ「適切」に処理をすることが大切。

処理の方法については

≪処理をする前の準備≫
使い捨てのガウン(エプロン)、マスク、手袋を着用。

しゃがんで処理をすることがあるので、衣類におう吐物が付着しないよう、ガウンやエプロンは長めのものが◎。また水分を吸収しないビニール製のものが良い。

≪処理の方法≫
①汚物中のウイルスが飛び散らないように、ふん便、おう吐物をペーパータオルなど(市販される凝固剤の使用などもOK)で静かに拭き取る。
何枚か重ねたペータータオルで左右からおう吐物を包むような感じで拭き取る。
残さないよう、しっかりと何回か繰り返す。

②拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)で浸すように床を拭き取り、その後水拭きをする。
おむつなどは、速やかに閉じてふん便等を包み込みます。おむつや拭き取りに使用したペーパータオルなどは、ビニール袋に密閉して廃棄する。この際、ビニール袋に廃棄物が充分に浸る量の次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約1,000ppm)を入れる方が良い。

≪処理が完了した後≫
ウイルスが屋外に出ていくよう、空気の流れに注意しながら十分な換気をする。

ノロウイルスは乾燥すると空気中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、処理が完了した後も念のため、換気をするとベター。さらに手袋を外した後は十分に手洗いをすること。

面倒ではありますが、感染拡大を防ぐためにも是非チェックしておいてください。

おう吐物の処理の中に「次亜塩素酸ナトリウム」という薬品が登場しますが、ノロウイルス対策にはこの次亜塩素酸ナトリウムを水で薄めた「塩素消毒液」を使うことが有効と言われています。
「そんな薬品は家にはない!」と思ってしまいますが、次亜塩素酸ナトリウムが入った「塩素系の漂白剤」でも代用できるので、シーズン前に用意をしておくと良いでしょう。

その際に注意することは
・商品ごとに濃度が異なるので、表示をしっかり確認。塩素濃度なども商品によって違うので、塩素消毒液を作る際も表示をチェックしてから作ること。
・商品は必ず、使用期限内のものを使用。
・おう吐物などの酸性のものに直接原液をかけると有毒ガスが発生することがあるので、必ず「使用上の注意」をよく確認してから使用すること。
・余った消毒液を保管する場合は、消毒液の入った容器を誤って飲むことがないように「消毒用」などと明記すること。
がポイントです。

感染力が非常に強いので、ウイルスに感染したら必ず発症する…と思いがちですが、ノロウイルスは感染しても必ず症状が出るというわけではありません。
最近は感染をしても、特定の症状が出ないまま便中にウイルスを排出し、完治をする「不顕性感染」が話題になっています。
症状が出ないから大丈夫!と考えてしまいますが、その人はたまたま症状が出なくても周囲の人に感染し、発症させてしまうケースがあるので、注意が必要です。
一般的にノロウイルスの潜伏期間は12~48時間と言われていますが、症状が出ていないと「保菌者」という自覚がないため、なかなか対策は難しいと思います。ですので、二枚貝を調理した後や食べた後、身近な人がノロウイルスにかかった場合は症状が出ていなくても「不顕性感染」の可能性があるので、手洗いを徹底し、もし、調理をする際は手袋の着用、トイレなどの使用後は除菌ができるウェットティッシュなどで自身が触れた部分はふき取るなど、配慮をすると良いでしょう。

また、このように発症させないためには日頃から「強い体」でいることが大切!
ノロウイルスに良い食材というのは残念ながらありませんが、ウイルスの侵入を防ぐために「粘膜を強化」することは効果があると考えられているのでビタミンAを含むレバーやたまご、牛乳などを摂取すると良いでしょう。また、発症させないための「抵抗力」を高めるにはビタミンCを摂ると体の土台を強くすることができます。

ビタミンCを含む食べ物は色々ありますが、中でもサツマイモは体を温めてくれる効果もあるので抵抗力アップ!免疫力アップ!におすすめ。

サツマイモは秋の味覚のイメージがありますが、実は12月は流通が最も多い時期の一つでもあります。時間がない時は簡単に焼き芋…など、手軽に摂ることができる食材なので、 食生活からも「予防」をしたいという方には良いでしょう。

さて、ここでクエスチョン!

冬に大流行するノロウイルス。有効な薬がないため、症状がおさまるまで安静にするのが基本的な治療法ですが、下の3つのうち、対策として正しいものはどれでしょうか?

〈1〉お風呂に入る
〈2〉厚着をするなどしっかりと体を温める
〈3〉吐いたら必ず水を飲むなど、小まめな水分補給をする

正解は…

ノロウイルスは人間の体内から出ても長期間生存し、乾燥や熱に強いのが特長です。そのため、おう吐や下痢をしてしまうと罹患者に再度ウイルスが付着したり、ホコリなどにウイルスが付いて空気中を漂うことになるので、罹患者だけでなく、周りの人にもノロウイルスが感染する恐れがあります。
早期に治癒、改善させるにはウイルスを出すことが重要なので、ある程度、おう吐や下痢がおさまったら、お風呂に入り、ウイルスを洗い流す方が効果的なのです。厚着や水分補給もNGではないですが、ノロウイルスは脱水症状になりやすいので、過剰に温めて発汗させるのは逆効果に!
また、おう吐や下痢の症状がひどい時に過剰に水分を摂るとおう吐などがひどくなることがあるので、こちらも少し落ち着いてから無理のない範囲で補給をする方が良いでしょう。

PageTop